【北京9日高山昌行】モンゴルの首都ウランバートルの中心部で七日朝、富良野出身の日本語教師、鈴木千恵さん(38)が殺害された事件の背景には、国際的な金融危機がモンゴル経済を直撃し、急速に治安が悪化している事情がある。
鈴木さんは、モンゴルとロシア合弁の小中高一貫校「第三学校」に勤務。関係者やモンゴル紙によると、鈴木さんは六日夜、ウランバートル市内の居酒屋で、別の学校の日本語教師を務める日本人らと飲食を共にし、七日未明に自宅に帰る途中、知人と別れた後、背後から襲われ、首を絞められて殺害されたとみられる。
この日本人は「きちんと鈴木さんを自宅まで送っていれば、こんなことにはならなかった」と悔やんだという。鈴木さんを知るモンゴル日本語教師会のモンゴル人教師は「明るく勉強熱心で、いい先生だった」と話した。
市内で暮らす六十代の日本人女性は「犯人は日本人を付け狙っていたのか。私自身は日中、人通りの多いところしか歩かないようにしているが、本当に怖い」と声を震わせた。
モンゴルでは近年の経済発展に伴い、貧富の差が拡大。さらに昨年来の国際金融危機で基幹産業の銅や金の鉱物採掘が打撃を受け失業者が急増、治安悪化に拍車をかけた。二〇〇七年のモンゴル国内の犯罪認知件数は前年比16・5%増え、〇八年も同様のペースで増加したとみられている。
モンゴルの遊牧民に薬箱を配布する「置き薬」事業を〇四年から行っている非政府組織(NGO)「ワンセンブルウ・モンゴリア」の森祐次理事長は「私自身、暴漢に襲われかけたことが二回ある。昨年十二月には事務所に泥棒が入り、コンピューターやデジタルカメラが盗まれた」と実情を訴える。
ウランバートルの日本大使館の藁谷栄参事官は「深夜の一人歩きは絶対避けてほしい」と呼び掛けている。
(02/10 07:35)北海道新聞
資本主義が繁栄すると言うことは、同時に犯罪も広がっていくと言うことなのか!